老い科学研究所 認知症編
第1章老いは、誰が決める
老いは、誰にでも訪れる
自然な変化
老化は身体の自然な変化であり、誰にでも訪れます。しかし、老い方は人によってさまざまです。
認知症について知る前に、まずは「老い」そのものについて見ていきましょう。長寿のお祝いの由来から、体の中で起きている変化、老いを支える暮らしの工夫まで、順にご紹介します。
長寿のお祝いと、その由来
| 呼び名 | 由来 |
|---|---|
| 古希70歳 | 唐の詩人・杜甫の詩の一節「人生七十古来稀なり」から |
| 喜寿77歳 | 「喜」の草書体が「七十七」と読めることから |
| 傘寿80歳 | 「傘」の略字「仐」が「八十」と読めることから |
| 米寿88歳 | 「米」の字を分けると「八十八」になることから |
| 卒寿90歳 | 「卒」の略字「卆」が「九十」と読めることから |
| 白寿99歳 | 「百」から「一」を引くと「白」になることから |
| 紀寿100歳 | 100年=一世紀を表す「紀」から(百寿とも) |
| 茶寿108歳 | 「茶」の草かんむりが「十十(二十)」、下の部分が「八十八」に見え、合わせて108になることから |
なお、日本の医療制度では75歳以上を「後期高齢者」と定めています。
101歳は「百一賀」、102歳は「百二賀」と、長寿のお祝いはその先も続きます。
体を動かす仕組みと、その老化
体は、神経・筋肉・関節・骨などの「運動器」が連携して動いています。
脳からの指令が神経を通じて筋肉に伝わり、筋肉が縮むことで関節が曲げ伸ばしされ、骨が体を支えます。年齢とともにそれぞれが変化し、体の動きは小さく、ゆっくりになっていきます。
神経
電気信号を筋肉に伝える速度が遅くなり、動きがゆっくりになります。
関節
軟骨がすり減って硬くなり、関節の動く範囲が狭くなります。
筋肉
筋線維の数が減り、一本一本も細くなることで、筋肉量が少なくなります。
骨
骨を壊す速度がつくる速度を上回り、骨量が少なくなります。
老いを支える、暮らしの工夫
道具で体の動きを助ける
杖や歩行器のほか、体に装着して動きを助ける器具もあります。電気で力強く補助する電動タイプや、着脱が簡単で電源のない場所でも使える無動力タイプがあります。
補聴器で聞こえを補う
補聴器は、マイクで拾った音を大きくし、聞こえにくい高さの音を使う人に合わせて補います。最初は違和感があっても、専門家と調整を重ねることで慣れていきます。
迷わない・焦らない環境を選ぶ
記憶に頼らなくてもわかる看板や標識、道順を覚えなくてもたどり着ける床の誘導、必要な情報だけが表示される画面など、脳への負担を減らす工夫が整った施設やサービスを選ぶことが大切です。
好きな活動を続ける
脳には、老化しても機能を保とうとする「予備力」があります。仕事や趣味など、やりがいを感じる活動を続けることで予備力は高まります。楽しいと思える活動を見つけることが大切です。
長寿と遺伝の関係
WHO(世界保健機関)の2023年版の発表によると、日本人の平均寿命は84.3歳で世界第1位です。100歳以上の方(百寿者)は、1963年にはわずか153人でしたが、現在は9万人を超えています。「2007年生まれの日本人の半数は107歳まで生きる」という試算もあります。
入院や介護を必要とせず、自立して暮らせる期間を「健康寿命」といいます。110歳以上の方(スーパーセンチナリアン)は、百寿者の中でもとくに健康寿命が長い方々です。
では、長生きする人とそうでない人を分けるものは何でしょうか。
双子を対象にした大規模な研究などから、寿命に対する遺伝の影響は25%程度とされています。
裏を返せば、残りの多くは生活習慣や環境などが関わっていると考えられます。
遺伝子の中には、病気のなりやすさに関わるものもあります。
たとえば「APOE(アポリポたんぱく質E)」という遺伝子には2型・3型・4型があり、
両親からひとつずつ受け継いで、誰もがふたつをペアで持っています。
このうち4型はアルツハイマー型認知症のリスクを高めることが知られており、
4型をひとつ持つとリスクは約3倍、ふたつ持つと十数倍になるとされています。
百寿者には、この4型を持つ人が少ないこともわかっています。